わたしのいもうと 〜笙と箏の為のレクイエム

松谷みよ子/作 神坂真理子/作曲
(1997年初リサイタル〜夕凪の夢〜委嘱作品)


絵本の言葉を生かした、弾き歌いの作品です。まるで紙芝居を見るように旋律が案内をしてくれます。

初演の時には25分もかかった大曲です。演奏時間だけでなく内容も軽々しく扱えない話なので、演奏には場所を選びました。主人公の少女はいじめられた事が原因で命をなくしてしまいます。“いじめ”という言葉は嫌いですが、弱いものいじめは昔からあります。大きく捉えれば、戦争もそうです。弱いものいじめは哀しい人間の性なのでしょうか。なくしたいものです。

「わたしのいもうと」の絵本を淡々と読む松谷みよこさんに出会って、ぽろぽろこぼれた涙はなかなか止まりませんでした。この絵本を音楽にしたい。この気持ちを伝えたい。神坂さんならきっとこの気持ちを音にしてくれる。そんな思いで委嘱しました。

笙と箏の弾き歌いという新しい形で、素敵な曲が出来上がりましたが、より多くの人に聴いてもらう為には時間を短くしなくてはなりませんでした。心血を注いで書いてくれた神坂さんに大胆なカットをお願いするのも申し訳なかったのですが、快く了解していただいて現在の形になりました。美しい旋律はどれももったいなく捨て難くて大変苦労しました。

阪神大震災のチャリティコンサートで何度も演奏し、何度も“CDはないのですか?”と聞かれたことも懐かしい思い出です。

絵本ではありますが、このお話は実際に松谷先生に寄せられた一通の手紙が元になっています。決して他人事ではない命の重みが私に演奏をさせるのでしょうか。どうかみんなが幸せになれますように...。

CDにする事を快く承諾してくださった松谷みよ子・味戸ケイコ両氏に深く感謝しています。